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【グラスヒュッテ様式】目で楽しむドイツ時計の質実剛健なムーブメント

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今回は、「グラスヒュッテ様式」と呼ばれるドイツ製高級時計のムーブメントに見られる美しい装飾や仕様をご紹介します。

グラスヒュッテ様式とは

グラスヒュッテ様式とは、4分の3プレート(詳細は後述)によってムーブメントをしっかりと覆い頑丈で高精度な作りのことを指します。アドルフ・ランゲが1860年代に作り上げたとされており、その頑丈さだけでなく美しい装飾や仕上げも特徴です。

現在は、A.ランゲ&ゾーネだけでなくグラスヒュッテ・オリジナルやノモスなどドイツを代表する時計の数多くに取り入れられており4分の3プレートの意味だけでなく広義に捉えられています。

今回は、冒頭の写真にも上げたランゲ1を参考に5つの代表的な仕様をご紹介します。

4分の3プレート(3/4プレート)

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出典: https://www.alange-soehne.com/

ランゲ1などドイツ時計のムーブメントをトランスパレントバックからご覧になったときにおそらく一番最初に気づくのはムーブメントの大半を覆っているプレートだと思います。このプレート(受け板)がムーブメントの4分の3を覆う大きさから4分の3プレートと呼ばれています。

1860年代にアドルフ・ランゲによって導入されたと言われており、歯車などをすべて一つの丈夫な板で支えることで安定性を向上させるというものです。この4分の3プレートは、安定性能を上げるだけでなく組み立てやすくするというメリットもあるのだとか。

グラスヒュッテストライプ

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出典: https://www.alange-soehne.com/

グラスヒュッテストライプとは、美しい帯状の縞模様の装飾のことです。スイス製の時計では、「コート・ド・ジュネーブ」と呼ばれています。4分の3プレート全体に施されているのが上の写真でよく分かると思います。ただの縞模様ではなく僅かな凹凸が付けられており光の当たる角度を変えることとで波打ったような美しい見た目が表情を変えます。

シャトン(ゴールドシャトン)

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出典: https://www.alange-soehne.com/

シャトンとは、歯車の軸受に使われるルビーやダイヤモンドなどの受け石を金属のリングで固定するものです。素材は真鍮など柔中な金属で高級機ともなると18Kが使用されそのため金素材のものはゴールドシャトンと呼ばれます。そもそもは、加工技術の精度が高くなった時代にムーブメントの受けと受け石のサイズがしっかりと固定されるように用いられていたもので現在ではどちらかといえば装飾的な意味合いが強くなっています。

特にランゲのムーブメントでよく採用されており、青焼きされたスチール製のビスで留められた美しいゴールドシャトンが見られます。

エングレーブの入ったテンプ受け

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出典: https://timeandtidewatches.com/

テンプ受けは、時計の心臓部であるテンプを支える部分のことです。このテンプ受けには、エングレーバーが一つ一つ手彫りで仕上げられた彫刻が施されています。フリーハンドで彫らるためエングレーバーひとりひとりの独特の癖などそれぞれに個性がありすべて一点ものです。工房の人が見れば誰が彫ったのかまで分かるのだとか。ブランドによって装飾も様々な種類があるので裏から見る際にはぜひ注目してみてください。

ジャーマン・シルバー

ドイツ時計のムーブメントにはジャーマン・シルバーという素材が使われることが多くあります。ジャーマン・シルバーは、洋銀や洋白とも呼ばれる真鍮よりも硬い素材で、先に上げたムーブメントの地板(プレート)やテンプ受けなどに使用されています。シルバーという名が付きますが、実は銀は含まれておらず銅と亜鉛とニッケルから構成される合金です。銀を彷彿とさせる輝きからこの名前が付けられているそうです。時間が経つとゆっくりと褐色に変色していく特徴を持っており経年変化を楽しむことができます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。スイス時計とはまた違った魅力が詰まったドイツ時計は、ムーブメントにも様々な特徴があります。是非手にとった際はムーブメントの細部までご覧になってみてはいかがでしょうか。

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