腕時計の読みもの

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ペリフェラルローターは時計を見せる自動巻き機構

 

ペリフェラルローターをご存知でしょうか。まだそれほど一般的ではありませんが、カール F.ブヘラの自社製ムーブメントCFB A1000が2009年に登場し、徐々に様々なブランドで採用されはじめています。ペリフェラルローターの最大の特徴は、ローターが外周に配されたリング形状である点です。一般的なセンターローターのムーブメントは、ローターがムーブメントの半分程度を遮ってしまいますが、ペリフェラルローターは、ムーブメントの外周をローターが回転するためムーブメントを隅々まで見渡すことができます。

また、ムーブメントを見渡すことができるという利点に加えて手巻き同等の薄さを実現可能にしています。

1950年代の最初の試み

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ペリフェラルローターは、特別新しいものではありません。1955年6月6日にジュネーブでPaul Gosteliが出願した特許(スイス特許番号322325号)から見つけることができます。

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それから約10年後の1965年6月15日にパテックフィリップは、巻き上げ効率のさらなる向上を目指し同様の特許(スイス特許番号548213号)を出願しています。後にこの機構を搭載したムーブメントCal.350(上部写真左)を開発しています。またその構造上リューズが受け側(裏側)に取り付ける必要がありました。

2009年 - カール F.ブヘラ

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カール F.ブヘラは、ペリフェラルローターをより現代的にさせたブランドとして評価されるべきブランドです。前述のGosteliやパテックフィリップの場合はリューズが時計の背面にありましたが、カール F.ブヘラはリューズを通常の腕時計と同様に3時位置に配置しました。

カール F.ブヘラのコンセプトは、セラミック製のボールベアリングを備えた3つの小さなDLCコーティングローラーを使ってペリフェラルローターを駆動させます。

セラミック製のボールベアリングは潤滑油を必要とせず、また双方向回転式となっており、どちらに回転しても巻き上げることを可能にしています。

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カール F.ブヘラは、このコンセプトを2009年のCal.CFB A1000に導入します。その後、Cal.CFB A1000を改良し大量生産化に対応させたCal.CFB A2000を2016年に、最も直近のものではトゥールビヨン機構を取り入れたCal.CFB T3000を2018年に発表しています。

これらすべてのムーブメントは、スイスのレングナウにあるカール F.ブヘラの自社工房で設計・製造が行われています。

その他ブランドのペリフェラルローター

カール F.ブヘラのコンセプトの発展に伴い、近年いくつかのブランドがペリフェラルローターを実装しています。例えば、ドゥ・ヴィット、ヴァシュロン・コンスタンタン、ブレゲ、オーデマピゲなどがそうです。

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ペリフェラルローターは超薄型の自動巻き時計の発展に貢献しています。2017年後半には、ピアジェが世界で最も薄い自動巻き時計「アルティプラノ アルティメート・オートマティック」を登場させます。

文字盤側からペリフェラルローターを見ることができるキャリバー910Pを搭載した同モデルのケース厚は、わずか4.30mmしかありません。これはムーブメントの外周にローターを配置することでスペースを節約できるペリフェラルローターだからこそです。

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そのわずか数カ月後には、ブルガリが「オクト フィニッシモ トゥールビヨン オートマティック」を発表し2つの世界記録を打ち立てます。 最も薄い自動巻き機構であり最も薄いトゥールビヨンを搭載したモデルでその薄さはわずか3.95mmです。

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手巻きモデルと比べてもケース系は少し大きくなりましたが、ペリフェラルローターのおかげで同等のケース厚に収めることに成功しました。しかしこの時計は、時間の設定と時計の巻き上げを切り替えるために4時位置のプッシャーを組み込む必要がありました。

 

まとめ

ペリフェラルローターは、間違いなく自動巻き機構における近年のイノベーションであると言えます。1950年以降、センターローターやマイクロローターが使われてきましたが、ペリフェラルローターが登場してからはまだ歴史は浅いです。
ますます多くのブランドが技術的にも見た目的にも洗練されたソリューションとして活用しはじめています。薄さ、巻き上げ効率の高さなど多くのメリットがあり、カール F.ブヘラのような中価格帯のブランドが比較的にリーズナブルな価格での提供を実現しています。今後の腕時計に多く組み込まれていくことになるのでしょうか。引き続き時計業界のトレンドに注目です。