腕時計の読みもの

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オメガがすべての時計の国際保証期間を5年に延長

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オメガは、2018年7月1日以降に購入されたすべてのオメガの時計の国際保証の期間を5年に延長することを発表しました。

“オメガの腕時計を購入する人が求める究極の信頼性とカスタマーサービスを、この保証が提供します。”

オメガCEO レイナルド・アッシェリマン

この新しい保証は、搭載ムーブメントに関係なく11月2日からすべての時計に適用されます。つまり手巻きキャリバー1861を搭載したスピードマスターやETAをモディファイしたキャリバー2500を搭載したデ・ヴィルも対象です。もちろん先日話題となったスピードマスターウルトラマンも対象となります。

2015年にロレックスは、国際保証期間をそれまでの2年から5年に延長し新たなカスタマーサービス基準を設定したことが当時話題になりました。ロレックスは、長い間アフターサービスの基準を定めており、他のメーカーと比べても比較的納期が短くまたリーズナブルなことでも知られています。他のいくつかのブランドでは、何カ月、ときに何年かかかってしまう場合もあるのです。

2015年以前は、他のメーカーも自社ムーブメントの保証期間を延長していましたが、ロレックスの2015年の公式発表後には、いくつもの時計ブランドがそれに続きました。それは、大手ブランドだけでなく新興ブランドにも波及しました。

いくつものブランドが5年へと変更していったわけですが、その背景には時計業界の劇的な進歩が隠されていました。

腕時計の保証の歴史

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オメガは、今回の発表で保証期間を5年へと延長しましたが、これまではコーアクシャル機構搭載モデルやシリコン製のヒゲゼンマイを搭載したモデルのみに限られていました。これまでの保証の最長期間は、マスタークロノメーター認定を受けたモデルで4年でした。

コーアクシャル機構搭載ムーブメントは、通常のレバー式の脱進機とは違いアンクルへの潤滑油の注油が不要となりるため、摩耗が少なく壊れにくいという特長があります。そしてこの機構によりオメガは、オーバーホール間隔を長くあけることができるようになり結果として保証期間を伸ばすことにも成功しました。

オメガは、1999年にコーアクシャル脱進機を発表します。そして当時コンステレーションに用いられていたCal.1120にモディファイする形で初めて組み込むこととなります。それからオメガCal.2500として知られ安定したCal.2500Dになるまでにいくつかの改良が加えられていくこととなります。

それ以降、コーアクシャル脱進機は、多くのオメガの自社キャリバーに採用されるようになります。またオメガは、シリコン製ヒゲゼンマイを開発しコーアクシャルムーブメントに組み込んでいます。

5年間の保証を提供する他のブランドとしてブライトリングが挙げられます。2009年から発売されているCal.B01は、コラムホイール式の自社製クロノグラフムーブメントです。ですが、特に何か技術的な側面から保証期間を延長しているというわけではないようです。ムーブメントには標準的なスイスのレバー式脱進機が採用されており潤滑油もなにか特別に開発されたというものはありません。

では、ロレックスはどうでしょうか。ロレックスは同じく5年の保証期間を提供しそれに伴った技術革新もなされているといえそうです。なぜならキャリバー3255というクロナジーエスケープメントを搭載しパワーリザーブが強化された自社製キャリバーの発表と保証期間の延長の発表がほぼ同時だったからです。ですが、ロレックスは2015年時点で新ムーブメントの搭載の有無に関わらず全ての時計の保証期間を延長しています。

オメガの新保証体系について

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オメガが、保証期間を5年へと延長したというのは、それほど驚くべきことではありません。オメガは工場を新設しており、METAS(スイス連邦計量・認定局)の認定プロセスの導入、そしてオメガがスイス最大の時計製造グループであるスウォッチグループの一員であるからです。

ムーブメントの種類に関わらず5年の保証が受けられるということは購入側にとっては喜ぶべき点であると思います。ですが、コーアクシャル機構を搭載したモデルでなければ油が切れ摩耗してしまうことは免れることはできません。機械の進歩なくしてこの新たな保証体系になるということは問題ないのでしょうか。問題なかったのであれば、なぜこれほど時間がかかってしまったのでしょうか。(もちろん全てのムーブメントが問題ないとは思っていません。)

厳しい意見かもしれませんが、ムーブメントの改良がない状態でも保証期間を伸ばすことができたのであれば、業界としてもっと早く行動することができたのではないかとも思います。ブロガーかつIT業界にいる筆者としては、時計業界のペースは伝統あるものだとはいえ少し遅い気がしてなりません。

最後にもう一度いいますが、この動きは歓迎されるものであることは間違いありません。今後の業界の動向にも注目していきたいです。