腕時計の読みもの

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時計のベゼルとは?ダイバーズからテレメーターまでベゼルの種類と読み方を徹底解説

腕時計のベゼル

この記事はMONOCHROMEの記事を和訳しています。オリジナルは以下を参照してください。

Understanding Bezels and all the Different Scales - Monochrome Watches

腕時計のベゼルは、シンプルですが様々な情報を伝えてくれる非常に効果的なツールです。

ダイビング時の潜水時間の計測からレーシングカーの平均時速の計測、落雷の位置の測定から海外時刻の把握など時計に付けられたベゼルにより時計の機能は向上します。

パテックフィリップ5975の文字盤

パテックフィリップ5975の文字盤にかかれているテレメーター、パルスメーターとタキメーター

ベゼルに限らず同様のスケール(目盛り)を文字盤に記載されたものもありますが、今回はそんな便利なベゼルや文字盤上のスケールの使い方や読み方をご紹介します。

ダイビングベゼル(カウントアップベゼル)

オメガ シーマスター ダイバー 300mのベゼル

ダイビングベゼル/カウントアップベゼルの代表例

ダイビングベゼルは、ダイバーズウォッチに装着された水中で使用するベゼルです。ダイバーズウォッチは、国際規格「ISO 6245」のひとつの中で0〜60分までの目盛りを5分感覚で描がれた逆回転防止ベゼルを装着していることを条件としています。今日のダイバーズウォッチに回転式ベゼルが採用されている理由は、クロノグラフのプッシャーだと防水性を損うためです。
多くのダイビングベゼルが、IOS 6425規格の5分間隔の目盛りの要件を超えて、0〜15分(場合によっては20分)までの目盛りを1分間隔に、残りの60分までを5分間隔としています。
これは1950年代初期のブランパン フィフティファゾムスやロレックス サブマリーナーといったダイバーズウォッチの先駆者的モデルにみられる標準的なレイアウトです。
ダイビング時のタンク内の空気残量を測るためのベゼルというのは、圧力計まで搭載したダイバーズコンピュータがある現在は、やや時代遅れです。ですが、機会式時計はダイバーズコンピュータのバックアップとして活用することはできるでしょう。

ロレックス シードゥエラーのベゼル

ロレックス シードゥエラーのベゼル

ダイバーズウォッチは、回転ベゼルと分針を合わせて使用することで60分以内の経過時間を簡単に読み取ることができます。

現在の時刻を指す分針を三角形のゼロマーカーにあわせるように回転させます。時間が経過し進んだ分針の指す回転ベゼル上の目盛りが経過時間を表します。

ほとんどの回転ベゼルは一方向にしか回転しない逆回転防止ベゼルを採用しています。

逆回転防止ベゼルは、ダイバーがベゼルを誤って操作してしまった場合でも残された空気量や減圧時間がより少ない方を示すことでダイバーの危険を避けられるようにしているのです。

コンプレッサーケースを採用した時計のベゼル

コンプレッサーケースを採用した時計のベゼルはケース内部に搭載されている - そのため両方向に回転するためISO 6425規格を満たしていない

潜水用に開発された時計の中には、インナーベゼルを採用しているものもあります。スーパーコンプレッサーケースを採用したロンジンのレジェンドダイバーウォッチLIPのノーティック・スキーなどは、通常のリューズの他にインナーベゼルを操作するためのリューズが付いています。

1200m防水を誇るオメガのシーマスタープロプロフというモデルは、ベゼルの誤作動を防ぐために2時位置にあるプッシュボタンを押し続けなければベゼル操作ができないようにしています。

欠点は、ダイバー達は実際に潜水する直前にベゼルを合わせるため片手でベゼルをセットする必要がある点です。Ploprofのような本格的なプロフェッショナルモデルの場合は、安全のために両手でセットする必要がありますが。
実際にロレックス サブマリーナをダイビングで使用した記事ディズニーランドで使える時計としてもダイバーズウォッチをご紹介しいます。あわせてご覧ください。

カウントダウンベゼル

ジンのカウントダウンベゼル

カウントダウンベゼルは基本的にダイビングベゼルの逆となる - 反時計周りに数字が配置されているが動作原理は同じ

カウントダウンベゼルは、ダイビングベゼルの60分刻みの目盛りを逆にしたものであると捉えてしまって構いません。
このベゼルは、60分から12時間の目盛りが反時計回りに印字されており、イベントの開始前または開始後の残存時間を測定することができます。

カウントダウンベゼルは、通常両方向に回転しますが、運転時には不十分です。
こういったベゼルは、パイロットウォッチやミリタリーウォッチに用いられており、例えば砲撃した直後に着弾するまでの時間を計測するなどです。

これらのベゼルはパイロットウォッチやミリタリーウォッチでよく見られ、軍事攻撃などで用いられてました。例えば、砲撃後のカウントダウンなどです。
またカウントダウンベゼルは、レガッタ(ヨット)レースなどにも使われます。原理はダイビングベゼルと同じです。

カウントダウンベゼルを採用しているブランドのひとつにジンがあります。ジン103や104といったモデルに搭載されています。

タキメータースケール 

続いてタキメーターです。多くのクロノグラフウォッチのベゼルや文字盤に書かれています。
タキメーターの主な用途は、自動車などの走行速度の測定や1分以内の経過時間の測定などが可能です。
ベゼルは固定されており、ダイビングベゼルのように回転させることはできません。
オメガのスピードマスターは、タキメーターベゼルを備えたクロノグラフの例として挙げられます。ベゼルには500から60の目盛りがあります。

オメガ スピードマスターのベゼル

スピードマスターのタキメーター - オメガは1957年に初めてベゼルに目盛りを付けたブランド。タキメーターやクロノグラフのその他のスケールは文字盤に描かれていた

タキーメーターは、原則としてクロノグラフと併用するツールです。

1単位の距離の移動(1単位の仕事)にかかる時間(秒数)を計測することで、1時間に何単位の距離の移動ができる(何単位の仕事がされる)かを簡単に知ることができる。

引用: Wikipedia

ロレックス デイトナのベゼル

ロレックス デイトナのベゼル - 「Units Per Hour」の記載の通り、基準とする距離によって速度をノット、マイル、キロメートルで計測することができる

移動するA地点からB地点の距離が1kmであることが分かっていたとしましょう。車がA地点に到達した際にクロノグラフをスタートしB地点に到達した際に止めるとタキメーターが指している部分が時速を示します。  

A.ランゲ&ゾーネ ダトグラフ・アップ/ダウン"ルーメン"のベゼル

A.ランゲ&ゾーネ ダトグラフ・アップ/ダウン ルーメンのベゼル - 原理は同じだが文字盤の内側に目盛りがある

また、一定のスピードで移動していることがわかっている場合は、移動距離を測定することもできます。
例えば、高速道路を時速120kmのクルーズコントロールで走行しているとします。クロノグラフをスタートさせ目盛りが120を指した時にあなたが1km移動したことになります。
これはかなり分かりやすい例ですが、より複雑な計算の補助として使うことが可能です。

GMT/デュアルタイム

旅行のお供に最適な時計といえば、2つの異なる時刻を表示することができるGMTベゼルを搭載したGMTモデルが挙げられます。最も有名なGMTモデルの先駆者といえば1954年に発売されたのロレックス GMTマスターでしょう。

ロレックスとパンナム航空が長距離飛行するクルーのために共同開発したGMTマスターは、赤と青の(通称ペプシ)ベゼルが特徴です。

GMTマスターは、GMTベゼルとGMT針を使用します。GMTベゼルには、24時間表示の数字が書かれています。またGMT針は、時針・分針・秒針とは色や形の違う特殊な針となっています。GMTマスターは、この2つを組み合わせることで第二時間帯(最大で第三時間帯まで)の時間表示を行うことができます。

ロレックス GMTマスターの時間表示方法は、その後の多くのGMTウォッチの手本となっています。

ロレックス GMTマスターII 126710BLROのベゼル

ロレックス GMTマスターII 126710BLROは、昼夜を表す2色の回転ベゼルが特徴である

一般的にGMTウォッチでは、文字盤の12時間表示の方を旅行先の現地時間(ローカルタイム)を、そして24時間表示のベゼルをホームタイムとして使用します。

ですが、この使い分けについては利用者が使いやすい方を選択するのが良いでしょう。

チューダー ブラックベイ GMTのベゼル

ロレックスのディフュージョンブランドであるチューダーもペプシカラーのGMTベゼルを搭載

2018年は、ロレックスGMTマスターIIの愛好家にとっては大きな収穫が有りました。ステンレスモデル、コンビモデルと金無垢モデルが登場しています。 

ロレックスだけでなくディフュージョンブランドのチューダーもペプシカラーのブラックベイGMTをリリースしています。

航空用回転計算尺(スライドルールベゼル)

初心者にとっては少し複雑かもしれませんが、航空計算尺は非常に強力なツールです。

航空用回転計算尺(航空計算尺)を搭載した有名な時計といえば、1952年にリリースされたナビタイマーが挙げられます。これは、元々クロノマットに搭載されていた回転計算尺を航空用に適用したものとして知られています。

かつてコックピットにハイテクな計器類が搭載されていなかった時代には、パイロットたちはナビタイマーを「腕につける計器」として活用していました。

航空用回転計算尺は、飛行時の所要時間、速度、距離、上昇下降距離、燃料の消費量など文字通り航空計算のために使われたベゼルです。

その他、回転計算尺を使うことで様々な計算を行うことができます。

 

ブライトリング ナビタイマーのスライドルール

ブライトリング ナビタイマーのスライドルール - 複雑なスケールを使用する最も代表的な時計

 

今日の我々の通常生活では、この航空用回転計算尺を使用することが無いため使い方については、忍耐と学習意欲が必要です。

ですが、乗算や除算といったシンプルなタスクであれば簡単に実行することができます。大抵のスマートフォンには電卓が既にインストールされているのでベゼルを実際につかうタイミングがあるかと言われればなんとも言えませんが。 

ホイヤー カリキュレーターのベゼル

ホイヤー カリキュレーターの回転計算尺を装備したベゼル

では、実際に計算をやってみましょう。16×8の乗算をしたいとします。外側のスケールの16を、内側にスケールの10に合せます。内側のスケールの8に対応する外側のスケールの目盛りから128が読み取れるため答えは128となります。

より複雑な計算をしたい場合は、時計に付属している取扱説明書を読むのが良いでしょう。

パルスメーター/ドクターズウォッチ

オメガ スピードマスター CK2998のベゼル

オメガ スピードマスター CK2998のベゼル - 脈拍30回にかかる時間を計測し、1分あたりの脈拍数を計測する

パルスメーターは、かつて医療の現場で活躍していた心拍数を測定するために設計されたものです。

ベゼル上、または文字盤上に書かれることもあります。パルスメーターは、脈拍数15回または30回に要する時間をベースにクロノグラフ針を併用して計測を行います。

計測を行うには、クロノグラフを開始して脈拍数が15回または30回に達したところでクロノグラフを停止させます。クロノグラフを止めた位置が指す数字が1分あたりの脈数を表しています。

パテックフィリップのパルスメーター

パテックフィリップのレディースクロノグラフに搭載されたパルスメーター

パルスメーターは、オメガ スピードマスターCK2998のようなスポーティなモデルやA.ランゲ&ゾーネのクロノグラフ、そしてパテックフィリップのレディースクロノグラフRef.7150にも搭載されています。

ロンジン アズモメーター・パルスメーター クロノグラフのスケール

アズモメーターとパルスメーターを搭載したロンジン アズモメーター・パルスメーター クロノグラフ

パルスメーターの別のタイプのベゼルでアズモメーターというものもあります。パルスメーターが脈拍数を計測するのに対し、アズモメーターは1分間あたりの呼吸数を計測することが可能です。

運動選手の激しい運動の前後の呼吸数などを測るといった際に使用されていました。

テレメーター

オンリーウォッチ2017のF.P.ジュルヌのベゼル

オンリーウォッチ2017のF.P.ジュルヌのテレメーター(黄色)を含む3つのスケールが文字盤に書かれたモデル

テレメーターは、光と音の速度の差を利用することで音の発生場所と現在地の2地点間の距離を計測することができます。

元々テレメーターは、戦時中に相手の砲撃距離を測定するための機能でした。

今日で使用するのであれば、例えば花火が光ったタイミングでクロノグラフをスタートし音が聞こえたタイミングで停止することでそこまでの距離を計測することができます。

デシマルカウンター

オメガ ヴィンテージのスピードマスターのデシマルカウンター

オメガ ヴィンテージのスピードマスターのデシマルカウンター - 1960年代、スピードマスターのベゼルはタキメーターを基本としていたが、テレメーター、パルスメーターそしてデシマルカウンターがオプションとして選択できた

デシマルカウンターは、ベゼル上に表示されるデシマル単位つまり100単位の目盛りのことを指します。デシマルは、10進法計測で使用される単位のことです。

オメガのヴィンテージのスピードマスターなどでみられ、時間単位あたりの製造数を計測することが可能です。