腕時計の読みもの

腕時計に関する様々な情報を「読み物」として紹介していく時計ブログメディアです。

『The Watch, Thoroughly Revised』ベストセラー本の全面改訂版が登場

The Watch, Thoroughly Revised

『The Watch』は、10年以上にわたって世界中で売れている時計関連本の1つで、2006年にGene Stoneによって書かれた本です。

今回ご紹介する『The Watch, Thoroughly Revised』は、今年2018年に全面改訂版として発売されたものです。

改訂版は、旧版の著者であるGene StoneとHODINKEEのマネージングエディターであるStephen Pulvirentとの共著で大幅に内容がアップデートされました。

The Watch, Thoroughly RevisedのRolexのページ

元版の著者であるGene Stoneは、ハーバード大学とスタンフォード大学出身の著作家です。元々時計好きの同氏は、腕時計の他にトラベルクロックも収集しており、自身のコレクションをTravel Watch Collectionというウェブサイトに公開しています。

Gene Stoneは、旧著執筆の際に腕時計初心者から熟練のコレクターまで幅広い読者が楽しめる書籍がないことに着目し執筆したそうです。その結果がベストセラーへとつながったのかもしれません。改訂版でもそのコンセプトは引き継がれています。

The Watch, Thoroughly RevisedのRolexのページ

内容は、日時計からスマートウォッチまでの時計の歴史からはじまり、現代の時計製造がいかにして進化し今日につながっているのかを知ることができます。

『The Watch, Thoroughly Revised』には、50の重要な時計ブランドが掲載されています。

そのうち新たに12ブランドが追加され、MB&Fやグルーベルフォルセイといった新興独立時計ブランドの他にロンジンやチューダーといった確立されたブランドも含まれています。

これまでも掲載されていたロレックス、パテックフィリップ、ジャガー・ルクルト、ブレゲ、オメガやA.ランゲ&ゾーネといったブランドはこの10年余の間に登場した新作モデルが追加されました。

The Watch, Thoroughly Revisedの時計購入とメンテナンスガイド

興味深い点は、著名な時計コレクターのプロフィール紹介や彼らの購入やメンテナンスに関するアドバイスが掲載されている点です。

時計愛好家が知るべき重要な用語集も収録されています。

何より500以上の素晴らしい写真があり、ヴィンテージウォッチからモダンウォッチの多様性と美しさを堪能することができます。

多少英語がわからなくても大きな写真で様々なブランドの時計を見ることができ、誰しもが楽しめる内容になっています。

 

『100万円超えの高級時計を買う男ってバカなの?』漫画で学ぶ高級時計の魅力

100万円超えの高級時計を買う男ってバカなの?-表表紙
100万円超えの高級時計を買う男ってバカなの?-裏表紙

今回は、高級腕時計専門誌『クロノス 日本版』にて連載されていた漫画「ムリやり時計ゼミ」を集めたコミックスをご紹介します。

タイトルがかなりキャッチーですよね。すでに100万円超えの時計を購入している方たちはギクッとしますし、時計について興味を持ち始めた方やこれから購入する方もそそられるタイトルではないでしょうか。

『100万円超えの高級時計を買う男ってバカなの?』の内容

Chronos第37号ムリやり時計ゼミ159頁

Chronos第37号 2011年11月号 159頁より

高級時計のことをまったく知らない女性漫画家マキヒロチ先生が、日本一時計に詳しい時計ジャーナリストの広田雅将氏、通称「ハカセ」の案内のもと、時計にまつわるテーマでさまざまな時計の現場に"大人の社会科見学"に行き、時計マニアとは異なる、しかし、女性漫 画家ならではの鋭い視点で切り込 み、高級時計はなぜこんなに高いのか、その 理由をひとつひとつ解き明かしてい くレポートエッセイ漫画です。

引用: https://booklive.jp/

『100万円超えの高級時計を買う男ってバカなの?』は、『クロノス 日本版』の連載漫画「ムリやり時計ゼミ」をまとめて一冊にしたコミックスです。単純にまとめたものという訳ではなく各回の終わりには、『広田ハカセの補習コラム』が追加されており、より理解を深めることができます。

本書の構成は以下の通りです。

広田ハカセのオススメ
高級時計ガイド

第1話: 薄型はすごい!?

第2話: オーバーホールは高くない!!

第3話: エナメル文字盤はなぜ高い?

第4話: 歯車と脱進機はなぜ大事?

第5話: クロノグラフは飾りじゃない!

第6話: なんで正規店がいいの?

第7話: 夜光塗料はMade in Japan!

第8話: アンティークウォッチは面白い!

第9話: やっぱり時計学校に行きたい!

第10話: サファイアクリスタルってどうやって作るの?

第11話: トゥールビヨンって何がエライの?

あとがき

基本的には腕時計に関してのあれこれを解説する漫画なのですが、クロノグラフ機構についてや夜光塗料、アンティークウォッチの魅力や時計学校についてなど一歩踏み込んだ内容となっています。
実在する会社や人物への取材をベースとしており信頼性が高く初心者から玄人まで楽しめるものになっていました。

『100万円超えの高級時計を買う男ってバカなの?』の魅力

Chronos第37号ムリやり時計ゼミ166頁

Chronos第37号 2011年11月号 166頁より

漫画家のマキヒロチ先生といえば、「いつかティファニーで朝食を」や「吉祥寺だけが住みたい街ですか?」などの代表作があり、どちらも実写ドラマ化されるほどの人気作品です。

今回はそんな漫画家であり時計素人のマキヒロチ先生が実際に高級時計について学んでいく内容ですが、元々コミカルな作風が多いためクスッと笑いながら読み進められました。

カラー写真を交えた解説は、巻頭の4ページほどだけでコラム以外すべてマンガ形式のため非常に読みやすかったです。逆に特定のメーカーの特定のモデルについて知りたい・学びたいという方は別の本を読んだ方を手に必要がありそうですね。

時計に関する書籍といえば、日本では雑誌が中心でやはり英語が必要となる海外のものが多いためこういう手のものはサクサク読めるのが魅力です。実際には、100万円超えの時計ばかりでなく高級時計がなぜ高いのかということを時計の内外から学ぶことができおすすめの一冊です。

全2巻ですでに完結しているので続編も今後ご紹介したいと思います。

あわせて読みたい 

www.thewatchblog.net

 

『偏屈のすすめ。』時計ファンはもちろん全てのクリエイターにおすすめの一冊

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今回ご紹介するのは、独立時計師フランソワ-ポール・ジュルヌが執筆した『偏屈のすすめ。』です。

時計好きの間では知られている本で、一度は読んでみたいと思っていた本をようやく手に取りました。

天才時計師フランソワ-ポール・ジュルヌ

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フランソワ-ポール・ジュルヌは、ブレゲの再来と言われるフランス出身の天才時計師です。

「日本人で、わたしのブランドを知っている人は1%もいないだろう」

引用: 偏屈のすすめ。- フランソワ-ポール・ジュルヌ

まえがきにそう記すジュルヌ氏のブランドは、同氏の名を冠したF.P. Journe(FPジュルヌ)というブランドです。

スイスの本社には社員が100人ほどで年間の生産数は約850本。まさに知る人ぞ知るブランドといえます。

私も時計を好きになり、時計について自分で調べたりいくつも購入するようになるまでは名前すら知らないブランドでした。

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出典: http://www.thefrenchelegance.com/

FPジュルヌの時計は、ひと目見たらそれと分かるデザインが特徴です。上部写真のようなインデックスがオフセンターに配置された時計などが特に有名です。

またデザインだけでなく複雑機構を搭載した独創的なムーブメントをいくつも開発していることでも知られています。

私も実際に時計を手にしたことがありますが、触れたときからその上質さが伝わってくるようでした。複雑機構を載せながらも薄さを追求しドレスウォッチとしてまとめ上げ、トランスパレントバックから覗くムーブメントも本当に美しいです。数多の時計愛好家たちが彼の時計に惚れ込む理由が少し分かった気がしました。
値段を聞いてすぐに腕から外しましたが...笑

 

天才時計師の時計作りへの信念と哲学を読む

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さていよいよ本についてです。本書はジュルヌ氏の幼少から現在にいたるまでの自叙伝です。各話の後には高木教雄氏の解説がついており、全226ページですが字が大きめなのでサクッと読めるボリュームでした。

時計の写真などは本の最初数ページにあるだけなので登場する時計はネットで調べながら読むとより楽しめると思います。私は手元にカタログがあったのでパラパラと捲りながら読みました。

本書では、ジュルヌ氏の徹底したものづくり(時計作り)に対するこだわりとその姿勢が書かれています。

わたしは「F.P.ジュルヌ」を、誰もが知るブランドに育てたいとは思っていない。わたしが望むことは、自分が理想とする時計を「誰にも邪魔されることなく」作り続けるだけ。
そのためには、わたし自身の目が十分に行きとどく、今くらいの規模がちょうどいい。そして、わたしが作る時計の価値をわかってくれる顧客の顔が見える範囲で販売し、わたしの理想を分かち合うことができれば、それで十分満足なのだ。
引用: 偏屈のすすめ。- フランソワ-ポール・ジュルヌ

普通の経営者であれば利益を追求していくところですが、経営者であると同時にクリエイター(時計師)でもあるジュルヌ氏は、利益ではなく自分の理想とする時計を追求し自分の作りたい時計だけを作ることを最優先に考える。そしてそれを認め分かってくれる顧客以外には興味を示さない。

このジュルヌ氏の自分の好きなことを徹底的に突き詰め、その時計の価値を本当に理解する人だけが購入してくれれば良いという考え方は全てのクリエイター達の究極の理想であり憧れだと思います。これはひとりの時計師による本ですが、ものづくりに携わるクリエイターなど時計ファンではない方にも非常におすすめの一冊です。

 

 

FPジュルヌの公式サイトはこちら

www.fpjourne.com

 

大人も楽しめる学習まんが『時計のひみつ』学研まんがでよくわかるシリーズで勉強する

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今回は、時計関連の書籍レビューです。時計雑誌のクロノスの読者応募プレゼントとして載っていたほどで子供向けの学習まんがですが、濃い内容で面白かったのでご紹介します。

学研まんがでよくわかるシリーズとは

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出典: http://kasatosyo.blog.fc2.com/

「学研 まんがでよくわかるシリーズ」は、書店などではいっさい販売されておらず、全国の小学校と公共図書館に寄贈されている学習まんがのシリーズです。一般に購入ができるのは電子書籍版のみですが、Amazonや楽天などでは販売しておらず学研が運営する電子書籍サイトからのみで購入が可能です。
学習教材をまんが形式にして子供たちが抵抗なく最後まで読めるものとして始まったシリーズのようです。

子供向けと侮ることなかれ充実の内容が魅力

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出典: https://bpub.jp/

『時計のひみつ』は、そんな学習まんがのシリーズ61巻目で、一般社団法人 日本時計協会、一般社団法人 日本時計輸入協会の協力のもと制作された本です。

子供向けに描かれているため非常に分かりやすく、時計の歴史やムーブメントからスイスの時計産業やバーゼルフェアまで幅広く充実した内容で読み応えのある一冊でした。

ストーリー

仲良しのふたご、ルイとハナは、夏休みに長野のおじいちゃんの家に遊びに行くこと。昔、時計を作る仕事をしていたおじいちゃんに連れられて出かけた「時の科学館」では、たくさんの人形が時を知らせてくれる、とても古い外国の時計や水で動く時計など、おもしろい時計がいっぱい。どんどん時計のひみつにひかれていくことに。

引用: 学研キッズネット

 

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出典: https://www.tripadvisor.jp/

ストーリーは、主人公の小学生のが、時計の修理などの仕事をしていた祖父のいる長野の家に遊びに行くところからはじまり、諏訪湖時の科学館儀象堂(上部写真)や時計の工場などを巡って様々なことを勉強していきます。 

フィリップ・デュフォー氏も登場

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出典: https://www.ablogtowatch.com/

独立時計師で有名なフィリップ・デュフォー氏も作中に登場します。

f:id:martybear:20180510203303j:image出典: ©学研ホールディングス 学研 まんがでよくわかるシリーズ61 時計のひみつ

こちらが漫画のコマ初登場時のデュフォー氏です。スイス時計について学ぶ最終章の第6章「歴史のあるスイスの時計」103ページの4コマ目から登場します。

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出典: https://monochrome-watches.com/

同氏が手がけたシンプリシティも登場していました。

www.thewatchblog.net

どこで読める?

前述の通り書店などで購入することができませんが、電子書籍版はウェブサイトから購入することが可能です。

そこで私も調べてみたのですが、学研さん...

太っ腹すぎやしませんか!?

学研が運営する『電子書籍ストアBeyond Publishing』でなんと無料で公開されていました。 

気になった方は無料ですし是非、下のリンクから一度読んでみて下さい。

時計のひみつ | 学研BookBeyond

bpub.jp

というか学研さん...『まんがでよくわかるシリーズ』全部無料で読めるようにしているんですね。恐るべし...。

 

その他の書籍紹介記事はこちらから

www.thewatchblog.net

 

『A Man & His Watch』(ア・マン・アンド・ヒズ・ウォッチ)全ての時計にはストーリーがある

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私が購入する時計関連の書籍はいつも雑誌が多いのですが、海外の時計コレクターの友人に勧められて購入した本をご紹介します。

A Man & His Watchとは

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『A Man & His Watch』(ア・マン・アンド・ヒズ・ウォッチ)は、本のタイトルの通り時計の持ち主とその時計のストーリーにフォーカスしたハードカバー本です。

著者Matthew Hranek氏が、世界中を飛び回りインタビューした全部で76本の時計が高画質の美しい写真とともに216ページにわたって掲載されています。

最近私が参加しているオフ会や時計好きの仲間とはこうした時計の話をしたりもしますが、なかなかそういった機会があるわけではないので、こうして本を通し様々な物語を読める本書は時計好きにはたまらない一冊だと思います。

 

世界的な著名人から一般人まで...時計好きなら誰もが楽しめる必携本

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昨年過去最高額の落札で話題になったポール・ニューマンのもうひとつのデイトナ(写真上部)やジョン・F・ケネディ大統領が就任演説の際に着用していたオメガ、F1レーサーマリオ・アンドレッティのコレクションといった誰しもが知る有名人の時計が多数掲載されています。

また世界的な著名人だけでなく写真家や経営者といった方も載っておりそれぞれの人と時計とのストーリーを垣間見ることができます。

藍染め師のG-SHOCK

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出典: http://heapsmag.com/

日本人の方のストーリーもありました。徳島を拠点にニューヨークでも活躍しているBUAISOUという藍染め集団の設立者のひとりで藍染め師の渡邉健太氏のG-SHOCK(上部写真)です。友人から貰った真っ白のG-SHOCKが藍染めの作業中の着用で美しく染まった写真が掲載されていました(内容は実際に本をご確認ください)。

今では個人的な依頼を受けることもあると書かれており、気になって探したところインスタグラムに投稿を見つけました。

 

Larry Peh (&Larry, Faculty)さん(@larry.peh)がシェアした投稿 -

 おそらくG-SHOCKのG-7900-1JFだと思いますが、独特なムラがベルルッティのパティーヌを連想させる美しい仕上がりですね。 

あなたの時計にはどんなストーリーがありますか?

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出典: http://www.josephbonnie.com/

私もそれほど多くのコレクションがあるわけではないですが、時計ボックスを眺めるとそれぞれの時計を買った動機だったり入手の背景、そして時計にまつわる話などを思い出します。

皆さんの時計にはどんなストーリーがありますか?

 

『A Man & His Watch』は、全て英語で書かれた本ですがどちらかというと写真集といった感じで美しい写真を眺めるだけでも十分楽しめると思います。

時計好きの方には、非常におすすめの本です。