腕時計の読みもの

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社外ムーブメントを搭載した有名な時計4選

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出典: A Collected Man

機械式時計の世界では全てのブランドが独自にムーブメントを製造しているのではないかと誤解をされている方もいます。しかし実際にはそうではありません。

多くのブランドがセリタやヴォーシェなどのサードパーティー製のムーブメントを採用しており、スウォッチグループやリシュモングループといった大手グループに所属しているブランドであればグループ内でムーブメントの供給を行う場合もあります。

そして供給されたムーブメントをそのまま載せることもあれば、ブランドのニーズにあわせて技術面や審美面で改造することもあるのです。

一方でムーブメントを自社生産するブランドもあり、自社で一貫してすべて製造する時計メーカーはマニュファクチュールと呼ばれています。ですが、マニュファクチュールと呼べるブランドはそれほど多くあるわけではありません。その理由は様々ありますが、やはり技術力とコストが挙げられます。業界で最も有名なブランドでさえ、時には外部からのムーブメント供給を受けることで知られています。今回は社外ムーブメントを搭載した4本の時計をご紹介します。

ロレックス コスモグラフ デイトナ 16520

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© Paul Boutros

今日のロレックスの生産体制を考えると外注ムーブメントを使用していたというのは信じがたいかもしれませんが事実です。

ロレックスのコスモグラフは1963年に登場し、翌年にはアイコンモデルの証である「デイトナ」を名付けられます。当時は、バルジュー72が搭載されており、その信頼性の高い手巻きクロノグラフムーブメントは1987年まで採用されていました。

手頃な価格のクオーツ時計が登場したことで巻き上げの必要な手巻きムーブメントは人気が廃れていきデイトナの売上も減少していきます。

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© Paul Boutros

これに対してロレックスは、自動巻きクロノグラフムーブメントのゼニス エル・プリメロをデイトナ 16520に採用します。当時の市場にはロレックスの高い基準を満たす自動巻きクロノグラフムーブメントは他にありませんでした。

もうひとつの理由としては、費用対効果の観点から自社でクロノグラフムーブメントを製造することにあまりを魅力を感じていなかったとも言います。

ロレックスは、そのままムーブメントを載せるのではなく大改造を施しています。

本来は毎時36,000振動の高速ムーブメントを耐久性を重視して毎時28,800振動にまで落としています。また、新たな脱進機を組み込むことで高精度を引き出しています。

こうして完成したロレックスのCal.4030は、最終的に元のゼニスのコンポーネントは50%しか残らなかったといいます。

オーデマ ピゲ ロイヤルオーク エクストラシン 15202

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出典: DreamChrono

少し時計に興味のある人であれば、オーデマ ピゲのロイヤルオークといえば今では誰しもが聞いたことがある時計になりました。ロイヤルオークは、世界で初めての真のステンレス製ラグジュアリースポーツウォッチで、ジェラルド・ジェンタによりたった一晩で考案されたデザインというのも有名な話です。

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出典: DreamChrono

ご紹介するロイヤル オーク15202は、ジャガー・ルクルト製のキャリバー920ベースのキャリバー2121を搭載しています。このジャガー・ルクルトのキャリバー920は、パテックフィリップ、ヴァシュロン・コンスタンタン、そしてオーデマ ピゲを含む3大雲上ブランドが採用するムーブメントでもあります。

フルサイズのセンターローターを持つ自動巻きの中では、現在でも最も薄いムーブメントの一つに挙げられます。最終的にオーデマピゲは、ジャガー・ルクルトからライセンスを購入し、現在キャリバー2121を製造し使用している唯一のメーカーです。

パテックフィリップ Ref.5970

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© Hodinkee

世界最高峰ブランドといえばパテックフィリップですが、そのパテックフィリップもまた外部のムーブメントに頼るブランドの一つです。

パーペチュアルカレンダークロノグラフで知られるパテックフィリップですが、2011年までは自社製の永久カレンダー搭載クロノグラフムーブメントを導入していませんでした。

2011年以前は、パテックにより大幅に変更されたレマニアベースのムーブメントを使用していました。この最後の例となるのは、パテックフィリップ Ref.5970です。

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© Hodinkee

現在のCEOのティエリー・スターン氏により設計され、2004年から2011年の間に生産されパテックのパーペチュアルカレンダークロノグラフの中では最も短い生産期間でした。

Ref.5970は、それ以前のRef.3970やRef.5020のようにレマニア2310をベースとしたムーブメントです。これはオメガのキャリバー321に使用されているものとベースは同じものでした。

 

オメガ スピードマスター CK2915

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©︎Phillips auction

オメガ スピードマスターがムーンウォッチとなる前は、秒数まで正確に時間を測定することを必要とした科学者やエンジニアなどといった人を対象とした非常にニッチな道具としての時計でした。

最初のスピードマスターは、1957年にキャリバー371を搭載しデビューしました。1950年代は、まだ多くの人々がドレスウォッチを身に着けていた時代です。

前述のようにレマニア2310クロノグラフムーブメントをベースとしていますが、実はこのムーブメントの背景にはちょっとしたストーリーがあります。

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出典: Le Monde Edmond

1940年にレマニアとオメガが共同で12時間計を備えた27mmのクロノグラフムーブメントの開発を試みます。このプロジェクトは「27 CHRO C12」と呼ばれ、1942年オメガのキャリバー321(レマニア2310)が開発されるまで続けられました。

この手巻きムーブメントは、毎時18,000振動で特徴的なU字型のブリッジを持ちます。1969年にキャリバー821に置き換えられるまで、幾度となく使用されました。

本記事はChrono24の以下の記事を元に執筆しています。

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