出典: Universal Studios
人類史上はじめて月に立った男を描く『First Man』(ファースト・マン)が遂に公開されました。
アメリカでは既に10月12日から公開されていましたが、日本での公開は2019年の2月8日でした。私は早速公開初日に観てきました。
時計好きの方はご存知かと思いますが、オメガはNASAの公式腕時計でもあります。そのため劇中には、いくつものオメガの時計が登場しました。
今回は、そんな映画『ファースト・マン』に登場する時計をご紹介します。
映画『ファースト・マン』とは
幼い娘を亡くした空軍のテストパイロット、ニール・アームストロング(ライアン・ゴズリング)は、NASAの宇宙飛行士に応募し、選抜される。彼は家族と一緒にヒューストンに移り住み、有人宇宙センターで訓練を受ける。指揮官のディーク・スレイトン(カイル・チャンドラー)は、当時の宇宙計画において圧倒的優位にあったソ連も成し得ていない月への着陸を目指すと宣言する。
『ファースト・マン』は、『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル監督とライアン・ゴズリングが再びタッグを組んだ映画で、人類で初めて月面に足跡を残した宇宙飛行士のニール・アームストロングの半生を描いた作品です。
デイミアン・チャゼル監督は、わずか3億円という低予算で制作した映画『セッション』で第87回アカデミー賞において5部門にノミネートされ、『ラ・ラ・ランド』でも第89回アカデミー賞で合計で6部門を受賞したことで知られています。
映画の原作は、ジェームズ・R・ハンセンによるニール・アームストロングの伝記『ファーストマン:ニール・アームストロングの人生』です。
ニール・アームストロングは非常に真面目な性格で、世間からの印象は無口であまり感情を表に出さない人物というイメージを持たれていたそうです。
一方で家族や親しい友人など心を許した人にだけ見せていたユーモアがあったというエピソードもあり、映画のなかでもそういったニールのキャラクターが見え隠れました。
原作となった伝記には無かったニールが家族に月へ行くことの危険性を説明するシーンなども映画では盛り込まれていました。
海外では、評論家や映画レビューサイトでも非常に評判が高く、主演のライアン・ゴスリングとクレア・フォイの演技力も高く評価されているのですが、納得の出来でした。
映画『ファースト・マン』で着用された時計とは
出典: Universal Studios
アポロ11号が月に飛び立ったのは、テクノロジーが現代のように発達しておらず、まだ携帯電話もなかった時代です。
そんな時代だったからこそ腕時計は宇宙飛行士達を支える非常に重要なツールのひとつでした。
NASAは、アポロ宇宙船で使われる全ての計器に非常に厳しいテストを実施しています。
NASAは、1964年後半に3つの時計ブランドをテストしました。10以上の過酷な検査を耐え抜き、それでもなお正常稼働し続け1965年3月に正式に採用されたのは、オメガのスピードマスターでした。
映画『ファースト・マン』では、ニールがプライベートで使用していた腕時計や実際に宇宙飛行に使用されたいわゆる「ムーンウォッチ」そしてNASAのエンジニアが使用していたストップウォッチも登場します。
オメガ CK 2605
ニール・アームストロング演じるライアン・ゴズリングが日常生活で着用していた腕時計です。
手巻きムーブメントキャリバー266を搭載しており、1950年代に販売開始された時計でした。
時針、分針、そしてスモールセコンドのシンプルな3針時計で、12時・3時・9時位置のインデックスのみアラビア数字仕様です。オメガのアプライドのインデックスも特徴的ですね。
劇中では、映画序盤からニールが宇宙飛行士の訓練を始めるまでに何度も登場しました。特に家族と一緒にいるシーンでよく見ることができました。
ライアン・ゴズリングは、映画『ラ・ラ・ランド』で主人公を演じたときも同様のヴィンテージのオメガを着用していました。
ゴズリングは、オメガのヴィンテージ3針ウォッチに特に縁がある俳優なのかもしれませんね。
オメガ スピードマスター ST105.003
お馴染みのオメガ・スピードマスターです。こちらもライアン・ゴズリングをはじめジェイソン・ラークが演じた同じ宇宙飛行士のエドワード・ホワイトも着用していました。
劇中では、NASAで行われていたアポロ計画のトレーニング中に使用されています。
ですが、私はそれだけでなく宇宙飛行士の訓練が始まってからのニールやエドの腕でも確認しています。
そのため宇宙飛行士のために普段使いもできるよう支給されていなのかなと思いました。
劇中、エドワード・ホワイトは、シルバーか明るめのレザーストラップを着けていたように見えましたがどうだったでしょうか。気づいた方はぜひコメントをいただけると嬉しいです。
史実では、ジェミニ計画の宇宙飛行士だったエドワード・ホワイトが、1965年6月3日にアメリカ初の宇宙遊泳を行った際にも着けていたモデルでもありました。
時計本体は、アプライドのオメガのロゴ「Ω」が特徴的でその下の印字にはプロフェッショナルの文字はありません。
そして細かい部分に目が行く方であれば気づかれたかもしれませんが、リューズガードが無いのも特徴です。
オメガ スピードマスター ST 105.012 "ムーンウォッチ"
アームストロング船長演じたライアン・ゴズリングとバズ・オルドリンを演じたコリー・ストールが宇宙飛行士としてアポロ11号で着用したスピードマスター(通称:ムーンウォッチ)です。
劇中のシーンでは宇宙服の上から着用するためストラップが非常に長くなっていました。おそらくベルクロの時計ストラップだったのではないかと思います。
先程のオメガ スピードマスター ST 105.003にはプロフェッショナルの文字がありませんでしたが、オメガ スピードマスター ST 105.012にはスピードマスターの下にプロフェッショナルと印字されています。
これは、NASAの数多くのテストを突破しNASA公認クロノグラフウォッチとして選ばれたということを意味します。
実際の歴史では、月着陸船「イーグル」が月面着陸した際に、アームストロング船長、マイケル・コリンズとバズ・オルドリンがこのスピードマスターを着用していました。
アームストロングが最初に月に降り立ち、オルドリンが2番目に月面を歩いた人物となりましたが、無重力そして真空という宇宙空間に耐えられたのはオルドリンのスピードマスターだけでした。そのためオルドリンのスピードマスターは、宇宙空間を耐えた最も重要な時計の一つとされています。
元々実物は、スミソニアン航空宇宙博物館に所蔵されていたのですが、途中で姿を消してしまい、現在はどこにあるのかは不明とのことです。
ところでオメガ スピードマスタープロフェッショナルといえば、自動巻きではなく手巻き機構なのですが、何故だかご存知でしょうか。
自動巻きではなく手巻き仕様なのは、無重力の宇宙空間では自動巻きのローターつまり振り子が機能しないからという理由でした。
オメガ ストップウォッチ
トレーニング中にNASAのエンジニアが使用した1960年代のストップウォッチです。
オメガは、オリンピックのオフィシャルタイムキーパーとしての役割も担うブランドであり、精密時計といえばオメガというブランドイメージを確立することにつながっています。映画では、ほんの一瞬しか出ていなかったかと思います。
まとめ
オメガの時計は、これまで何度もハリウッド映画のスクリーンに登場していますが、歴史に密接に関わりのあるものはあまりありませんでした。有名なもので言えば、トム・ハンクスが、宇宙飛行士ジム・ラベルを演じた1995年の映画『アポロ13』でしょうか。
オメガは、1964年にNASAの宇宙計画に時計を供給できた唯一の時計メーカーであり、宇宙探査においては比類ない歴史を持っています。そしてNASAのヒューマン・スペース・フライトプログラムへの唯一の時計サプライヤーで、今日でも宇宙飛行において使われているそうです。
映画自体も素晴らしかったですし、実際に歴史を刻んだ腕時計がキャストの腕で活躍しているのを観るのは非常に楽しかったです。
インターステラーを観たときも思ったのですが、映画館で観ることでより没入感を楽しめるので気になった方は、劇場に足を運んでみてください。
小さなコックピットの中の宇宙飛行士たちの息遣いや宇宙空間の静寂などリアルに楽しめると思います。
時計ファンの方には一点アドバイスがあります。普段映画が始まる前の広告は観ないでギリギリに座っているという方、ぜひ少し早めに行ってみてください。
上映前に『ファースト・マン』のための広告が観れますよ!
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