腕時計の読みもの

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Kikuchi Nakagawa "Murakumo" 二人の日本人時計師による和製カラトラバ

Kikuchi Nakagawa - Murakumo

Kikuchi Nakagawaというブランドをご存知ですか?Kikuchi Nakagawaは、菊池 悠介氏と中川 友就氏の二人の時計師によるウォッチメーカーで2018年に最初の時計「Murakumo」をリリースしました。

今回、実際にお二人にお会いしてMurakumoを見せていただくことができましたのでいくつかの写真を交えてご紹介します。

二人の日本人時計師による新鋭ブランド

菊池 悠介氏
中川 友就氏
左から菊池 悠介氏と中川 友就氏

菊池氏と中川氏の苗字を取って付けられたKikuchi Nakagawaは、 以下の2つの相反する理念を掲げています。

イマジナリー・ウォッチメイキング

  • 金属の持つ抽象性を引き出し、道具の域を超えた金属芸術を追求する。
  • 機械式腕時計黄金期である30年代-50年代の延長として道具としての正統な時計を作る。

道具の域を超えた金属芸術については、Murakumoのケースと針に施されたブラックポリッシュを見れば一目瞭然といえます。また、機械式腕時計の黄金期と言われる1930年代から1950年代の時計のデザインにインスパイアされた時計製造については、Murakumoのデザイン性の高さから伝わってきます。その当時の最も模範的な時計といえば、パテックフィリップ カラトラバRef.96(通称クンロク)が挙げられます。

パテックフィリップ カラトラバ Ref.96

出典: chuukotokei

以前に『パテックフィリップ流スモールセコンドの配置の仕方』でクンロクが黄金比を元にデザインされていることを当サイトでもご紹介しましたが、Murakumoにもそれが大きく反映されているように感じました。

この理念は、字面ではパッとイメージすることは難しいかも知れませんが、実際に手にとって時計を見ることで伝わってくるように思います。

2018年新作時計"Murakumo"

Kikuchi Nakagawa - Murakumo

Murakumoのケースは316Lステンレススチール製で、直径36.8mm、ケース厚8.5mmと小ぶりで薄いエレガントな形状です。ラグ幅は当時のサイズ感からすると少々広めの22mmとなっています。文字盤は、公式の写真では真っ黒く見えるのですが実際には表面が少しざらついたようなマットブラックです。

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上部写真は私が撮影したものですが、文字盤の質感としてはこれが肉眼に近い色合いだと思います。ただ光源によって表情を変えるということだったため自然光のもとではまた違った風合いになるかもしれません。ドレスウォッチながら少し軍用時計を思わせる色合いでスーツや少しカジュアルなシーンでも活躍しそうな印象です。

ブレゲ数字は明るい白色のラッカーでタンポ印刷されています。ブランド名は当時を彷彿とさせる控えめなサイズです。一方でスモールセコンドのトラックはやや大きめです。

ちなみのこの時計は、全てがKikuchi Nakagawaによって製造されているわけではありません。針などの精密部品の製作は株式会社由紀精密が、ケースなどの外装部品は株式会社松浦製作所によるものです。ブラックポリッシュなどそれらの部品の最終的な仕上げは、Kikuchi Nakagawaによって手作業で行われています。純正のストラップは、浅草の松下庵に発注されているそうです。

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ブラックポリッシュは、研磨された鏡面仕上げのことを指します。その名は、仕上げられた鏡のようにフラットで歪のない面に対して光が当たった際に黒く見えることに由来しています。通常ブラックポリッシュは、ケースでも針などの限られた面積やムーブメントの一部にだけ使用されることが多いのですが、Murakumoにはケース全体と時分針にも施されています。

Murakumoの研磨される前の時針
Murakumoの研磨された後の時針
左から研磨前の時針と研磨後の時針

時針は、スペードの様な形になっておりブラックポリッシュによってその存在感が際立っています。

Murakumoの分針
Murakumoの秒針
左から分針と秒針

スペード型の時針に目が行きがちですが、実は分針も波を打ったようなとても特徴的な形状になっています。

Murakumoのケースバック
Murakumoのケースサイド

ケースバックも見事なブラックポリッシュで歪み一つ無い仕上がりです。ケースサイドを見るとリューズに自分の顔がしっかりと映るのが見えるほどでした。写真はありませんが、裏蓋の内側にはペルラージュが施されています。また、シリアルナンバーなどは無いか確認した所裏蓋にユーザーが分からない形で識別するためのドットが入れられるのだそうです。

当日はムーブメントが入っていませんでしたが、マイクロローターを搭載したヴォーシェ・マニュファクチュール・フルリエ社のKN001が搭載されるとのことです。 

時計は、専用の木製のボックスで提供されます。また、東レの超極細繊維を使ったクリーニングクロス「トレシー」も付属します。

海外からの反応も非常によく現在のオーダーは、海外と日本とで半々くらいとのことでした。納期は12カ月から24カ月でオーダー状況によって変わるため気になる方は是非ご確認ください。

2019年新色が登場

黒文字盤のみの展開だったMurakumoですが、新たに白文字盤が登場しました。インデックスのカラーが反転して黒で印字されています。よりトラディショナルなカラトラバスタイルに近づいた印象ですね。

こちらも非常に美しく既にSNS上でも話題になっています。

まとめ

Murakumoの素晴らしさは、とにかく写真では伝えきれないのが残念です。写真と実物が違う時計はいくつもありますが、Murakumoもその時計の一つだと思います。純粋に写真にその真の姿を写すのが難しいです。今回撮影後に、肉眼で見るのと近い形で掲載はしていますが、圧倒的なブラックポリッシュと仕上げのため(そして私の写真スキルの問題のため)それでも忠実に伝えられているとは言い難いです。

百聞は一見にしかずですので、手にとってその目でご確認いただくのが良いと思います。Kikuchi Nakagawaの公式Instagramをフォローしてダイレクトメッセージで実機をご覧になられたい旨をお送りされればご返答いただけると思います。

また、気になった方、オーダーされたい方は以下の公式ページでもさらに情報を得ることができるのであわせてご確認ください。

KIKUCHI NAKAGAWA 公式サイト

基本情報

ブランド: Kikuchi Nakagawa
モデル: MURAKUMO
リファレンス番号: -
ケースサイズ: ケース径 36.8mm / 厚さ 8.5mm
ケース素材: ステンレススチール(SUS316L)
防水性: 日常生活防水

ムーブメント情報

キャリバー: Vaucher Manufacture Fleurier KN001
パワーリザーブ: 48時間
駆動方式: 自動巻
振動数: 6hz 21,600振動/時
石数: 29石

価格

定価: 2,150,000円(税抜) / 2,322,000円(税込)