シチズンは、昨年ブランド創立100周年を迎えバーゼルワールド2018で特別な懐中時計をリリースしました。
その懐中時計は、Calibre 0100と呼び、シチズンが開発した年差±1秒の究極の高精度クォーツムーブメント「キャリバー0100」を搭載していました。
懐中時計のキャリバー0100は、プロトタイプだったため一般販売されませんでした。
そしてシチズンは、今年のバーゼルワールド2019で新作としてキャリバー0100を搭載した腕時計を3本リリースしました。
キャリバー0100を搭載した新作ウォッチ
昨年発表されたCalibre 0100は、懐中時計のケースにはいったプロトタイプでした。
当時から腕時計用として転用できるのではないかと推測するメディアも多かったのですが、シチズン側からの公式な発表は無く今年ついにキャリバー0100を搭載した腕時計『The CITIZEN Caliber 0100』が発表されました。
この新作時計は、ケース径37.5mm、ケース厚9.1mmで本数限定で販売されます。
18K ホワイトゴールドケースのThe CITIZEN Caliber 0100 AQ6020-53Xは限定100本、スーパーチタニウムケースは限定700本となります。
700本のうち黒文字盤のAQ6021-51Eは500本、そしてMOP文字盤仕様のAQ6020-53Xは200本限定で販売される予定です。
余談ですが、キャリバー0100を搭載した懐中時計は「Calibre 0100」で、腕時計のモデル名は「Caliber 0100」となります。わずかにスペルが違うんですね。
世界最高精度年差±1秒のキャリバー0100
クォーツ時計は、32,768Hz(=2^15Hz)で振動する水晶振動子を用いて精度の高い時刻表示を実現するのですが、このキャリバー0100の場合は8,388,608 Hz(=8.4 MHz)と非常に高い周波数の水晶振動子で動作します。
つまり256倍の周波数を持つ水晶振動子を使用していることになります。
また水晶振動子もATカット型水晶振動子と呼ばれるものを使用しており、これは従来の音叉型のものではなく菱形のものとなります。
シチズンは、歯車のわずかな偏心をなくすためにLIGA工法と呼ばれる微細構造物形成技術を取り入れています。
このLIGA工法は、パテックフィリップやロレックスが用いている工法でもあります。
シチズンは、この技術を歯車やバネなどの部品に使用することで高精度を実現しています。
腕時計は、歯車が噛み合う際にできるバックラッシュ(あそび)によって秒針がブレて見えることがあります。
通常のクオーツ時計では問題ありませんが、±1秒という精度を追求する観点からは決して無視できないものとなります。
そのためシチズンは、上部のような特殊なバネ(もちろんLIGA工法採用)を歯車に組み込んだ三番戻し車を開発しバックラッシュを抑制しています。
またキャリバー0100は、通常のクオーツムーブメントと異なり合計で17石が使用されています。
これまでの高精度、高周波数のクォーツ時計の最大の問題はバッテリー寿命でした。
より高い周波数の水晶振動子を利用するということはそれだけ電力を消耗するということでもあります。
1975年にシチズンは、『クリストロン メガ』と呼ばれる世界初の年差±3秒以内の高精度時計をリリースしました。
このクリストロン メガの水晶振動子は4.1MHzで、バッテリーのバッテリー寿命は6ヵ月とされていました。
年差±3秒以内というのは驚異的な精度でしたが、わずか半年というバッテリー寿命は商用販売する時計の寿命としては少々短すぎました。
八角形の文字盤を持ちブレスレット一体型の金無垢ケース仕様で当時450万円という価格だったこともあるかもしれませんが笑
ですが、クォーツ時計が1969年に登場してからそれほど時間の経っていない1970年代半ば当時としては偉業でした。
ちなみに当時リリースしたクリストロン メガのクォーツも今日のキャリバー0100の様にATカット型水晶を採用していました。
それから44年後の現在、パワーリザーブはどうなったのかといえば、通常6ヵ月、省電力モードで最長8ヵ月で登場しました。44年前と違う点は、シチズンのエコ・ドライブの技術が組み込まれていることです。
エコ・ドライブによってわずかな光でも発電することが可能となりこれまでの高精度クォーツムーブメントのバッテリー寿命の課題を解決したのです。
もちろん周波数が2倍になっているということもその技術の発展の凄さを語る上で忘れてはなりません。
クォーツ時計の弱点は、先のバッテリー寿命だけではありません。
クォーツ時計は、トルクが弱いため重い針を安定的に動かすことができません。そのため機械式時計に比べて針の素材、長さや形状といったデザイン面においても制約がありました。
しかしこのCaliber 0100の針には、重い真鍮が採用されています。
真鍮の美しさをデザインに取り込むことができ、また精度の高さだけではなく機械式ムーブメントに劣らないトルクの強さをアピールしています。
真鍮は針だけでなくインデックスにも用いられています。
これほどの技術の詰まった時計ですからもちろん価格は一般的なクォーツ時計の様な価格では手に入れることはできません。
18Kホワイトゴールドモデルは、税抜きで1,800,000円。スーパーチタニウムモデルは、税抜きで800,000円となります。
日本の時計ブランドといえばセイコーとシチズン。近年セイコーが欧米ブランドに勝つための高級化路線を進む中、シチズンの高精度を追求する姿勢もブランドそれぞれ面白いですね。
基本情報
ブランド: Citizen (シチズン)
モデル: Caliber 0100 (キャリバー0100)
リファレンス番号: AQ6010-06A(ホワイトゴールド)、AQ6021-51E(スーパーチタニウム)、AQ6020-53X(スーパーチタニウム MOP文字盤)
ケースサイズ: ケース径 37.5mm / 厚さ 9.1mm
ケース素材: 18K ホワイトゴールド、スーパーチタニウム™(デュラテクトα)
防水性: 50m
ムーブメント情報
キャリバー: Cal.0100 (エコ・ドライブ)
パワーリザーブ: 6ヵ月可動(パワーセーブ作動時 約8ヵ月)
駆動方式: 自動巻
振動数: 8,388,608 Hz(8.4MHz) / ATカット型水晶振動子
石数: 17石
価格
定価: ホワイトゴールド 1,800,000円(税抜) / スーパーチタニウム 800,000円(税抜)
詳細は以下の公式サイトをご参照ください。
The CITIZEN Caliber 0100 スペシャルサイト [シチズン腕時計]
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